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J・ディラとドーナツのビート革命

J・ディラとドーナツのビート革命

2018

先日、NHKの朝のニュースでケンドリックラマーを特集していました。しかも9分も。
優れたジャーナリズムに送られるピュリツァー賞をラッパー史上初受賞。
複雑なアメリカ社会の難しさが見事に表現されているというのが受賞の理由。
まさかNHK(しかも朝の7:30!)でヒップホップの特集が組まれるなんてすごいなぁと思います。
今回の推薦書は、32歳の若さでこの世を去った天才ビートメイカー、Jディラが駆け抜けた短い生涯とその音楽に迫る、“J・ディラとドーナツのビート革命”です。

まずヒップホップとは何かを簡単に説明すると、DJ,MC(ラッパー),ブレイクダンス,グラフィティーの四大要素(フォースエレメンツ)から構成された、文化活動のことを言います。
Jディラはその中でもDJ(兼、ビートメイカー、プロデューサー)として活躍していました。
ヒップホップスピリットにはDIY精神があって、例えばAKAIのMPC3000というサンプラーマシンはサンプル容量に22秒という限界があったところを、33回転のレコードを45回転にしてサンプリング。それをスロー再生してオリジナルのスピードに戻すことによって機材の限界を超えた作り方をしてみたり、サンプリング音源もジャズからゴジラのサントラまで兎に角、自由でデタラメ。
ディラの初めての指導者だった地元デトロイトのミュージシャンのジョセフ“アンプ”フィドラーも、
「どうやって作るかは教えないぜ。自分で学ばなきゃな」
「本を読んで調べるんじゃないぞ」
と教え、機材メーカーが決めた意図や制限から自由になり、ルールに縛られずに制作ができたと書かれている。
DJのCUT CHEMISTもこんな言葉でヒップホップを表している。
「ルールに逆らう音楽は魅力がある。ルールというのは破るためにあるものだし、ルールを破ったときに新しいアイデアが誕生し、音楽が進化する。」
本屋に行けば、数多くのHOW TO 本が並んでいて、僕もOfficeだ、アドビだの参考書を買ってきた経歴があるのでこのDIY精神には心に刺さるものがありました。
何よりオリジナルであることが重要視されるヒップホップカルチャーでは人と違うことは美徳となっていて、トライブコールドクエストのラッパーQ-Tipは“Good to be different(違うことがすばらしい)”という言葉を使っている。

地元のDJ仲間ハウスジュースは「Jディラの一番すごいところはルールを持たないことさ」「彼は何でもサンプリングする。昨日発売されたばかりのものでもね。それがCDでもカセットでも関係ない。彼がそんな風にして作ったものは、ある種の境界線を消し去っているように思えるんだ。自分を枠に閉じ込めて思いとどまらせてしまうのは自分自身なのさ。自分が本当にやりたいことだけをやらなくちゃってね。それこそが音楽だよ」と生前の彼のことを回想している。

Jディラの作り出す音楽は、自分にそして音楽にとても正直だったんだと本書を読んで知った発見でした。
ループミュージックは時に“退屈”だと評されますが、彼には当てはまらないと思います。
ぜひ本書とともに彼のクラシックアルバム“Donuts”を。

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